最近、中古住宅のチラシや広告で、「リノベーション物件」「フルリノベーション済み」というキャッチコピーを見かけるようになりました。
その広告の写真を見るとピカピカのキッチンやお風呂写っていますし、間取りも今風で使いやすそうです。
しかし、
- 普通の中古物件よりどんなメリットがあるのだろうか?
- リフォーム物件とどう違うのだろう?
- 実は、デメリットもあるのではないだろうか?
という疑問がわいてくるのではないかと思います。この記事では、そんなあなたの疑問にお答えしていきます。そして、実際に購入にあたっての注意点もお伝えします。
最後までお読みいただければ、あなたの物件探しにリノベーション物件を加えるべきかどうか判断できるようになります。
要点だけ手っ取り早く知りたい方は、目次の「いいね」をクリックすると最後のまとめにジャンプできます。
リノベーション済み物件とは?
そもそも、「リノベーション済み物件」とは、どのような物件をいうのでしょうか?リフォーム済み物件と何が違うのでしょうか?
リノベーション住宅の普及を目指す「一般社団法人 リノベーション協議会」によると、
- リフォーム:原状回復のための修繕・営繕、不具合箇所への部分的な対処
- 機能、価値の再生のための改修その家での暮らし全体に対処した、包括的な改修
と定義しています。
しかし、業界ではリフォームとリノベーションはあいまいに使われています。
人や業者によって、住宅設備を全て一新したもや、間取りを変えたものをリノベーションと呼んだりすることもあります。
つまり、売主や仲介する会社によってリノベーションの意味合いが違っているのです。
本記事は、イメージしやすいように「リフォームは表面的な修繕、リノベーションは大規模な工事」と区分けして、以下の記述を進めていきます。
これから購入をされる方は、物件資料(マイソク)の「リノベーション済み物件」の記載をうのみにせずに、どこまで工事をした物件なのか確かめることをお勧めします。
リノベーション済み物件のメリット
次に、普通の中古物件よりどんなメリットがあるのかを見ていきます。
中古であってもすぐに住むことができる
一般的な中古住宅の場合は、買主が購入して物件の引き渡しをしてもらってから、自分でリフォーム又はリノベーションすることになります。
そうすると工事期間の分だけ入居が遅くなりますし、リノベーションの設計、工事業者の選定や、ローン手続き等手間もかかります。
リノベーション済みの物件なら、物件自体を気に入ったら契約して引き渡しを受ければ、手間も追加の資金も必要なく、すぐに住み始めることができます。これが、リフォーム済み物件の最大のメリットといえるでしょう。
生活のイメージがしやすい
リノベーション済みの物件は、概ね売主が不動産会社のため、物件の販売促進のために物件内に家具や小物を加え、新築のモデルルームのように飾り付けしている(ホームステージングという)ものが多いです。狙いは、内覧をした方に生活のイメージをつかんでもらうことです。
また、売主の不動産会社によっては、飾り付けに使った家具や小物を購入者にプレゼントするサービスを行っているところもあり、お得感があります。
自分でリフォームする場合と比べて安価であることが多い
普通の中古物件を購入して自分でリフォームする場合は、まず購入費用+購入の諸費用を支出し、リフォームの設計、見積り、工事を行ないます。
リフォームの段階で、リフォームをしようとする箇所を壊して見たら思いのほか傷みが大きくて補修費用が多額になったり、工事進行中に夢が膨らんで高級な部材や設備をチョイスしてしまい予算をオーバーしてしまう事が多々あります。
リノベーション済み物件なら、その物件があなたの思い描くものとマッチしていれば、工事費用も価格に含まれていますので、予算をオーバーすることはありません。
このように、結果的に見れば、自分でリフォームするより安価になります。
売主が不動産会社なので、保証期間が長い
住宅の売主が不動産会社である場合は、瑕疵担保責任を負わなければなりません。
「瑕疵」とは、本来備えているはずの性能を発揮できない故障や欠陥で、見た目にはわからないものをいいます。
具体的には、雨漏り、シロアリ被害、屋根や柱、梁等の腐食および、給排水管の故障のことです。瑕疵が合った場合に売主は、修理したり損害を賠償したりしなければなりません。
問題は、いつまでこの瑕疵担保責任を負うのかということです。個人が売主の場合には、売買契約書で3ヶ月以内とすることが多いです。
売主が不動産会社の場合は、宅地建物取引業法で引き渡しから2年以上としなければなりません(第40条)。したがって、普通の中古物件より保証期間が長くなります。
売主が不動産会社なので、住宅ローン減税額が大きい
住宅ローン減税とは、年末時点の住宅ローン残額の1%が、10年間支払った税金(所得税・住民税)から戻ってくるという制度です。
現在は、個人が売主の場合は最大200万円ですが、売主が不動産会社を含む法人の場合は最大400万円になります。
また、2019年10月に消費税が増税されました。政府は増税による景気減速の対策として、住宅ローン減税の制度を変更し、従来の10年間から3年間延長しました。
この変更が適用されるのは、消費税増税となる売主が不動産会社を含む法人の場合だけです。つまり、普通の中古物件より減税額が大きくなります。
※住宅ローン減税の3年延長は、2020年12月末までの時限措置となっていますので、注意してください。
ただしすべての物件で住宅ローン減税が利用できるわけではないので、注意が必要です。
関連記事「府中市の中古住宅購入で住宅ローン控除を使うためには?」
住まいの給付金を使える場合がある
住まいの給付金は、2014年4月の消費税増税時に導入された制度です。住宅購入者に消費税引上げによる負担を軽減するため、一定範囲の収入の人には現金を給付するものです。
したがって、制度の対象となる中古住宅は、消費税が課税される売主が不動産会社を含む法人の物件に限られます。
また、2019年10月に消費税が増税されました。政府は増税による景気減速の対策として、適用される収入の範囲を510万円から775万円以下に引き上げられました。
消費税増税対策で、住宅購入時の贈与の非課税枠が大きい
住宅購入時の贈与の非課税枠とは、自分が住む住宅を取得(新築・中古を含む)するための資金を、直系尊属(父母や祖父母など)から贈与を受けた場合、一定の金額まで贈与税がかからないという制度です。
2019年10月の消費税増税にあわせて、2020年3月までに契約し、消費税率10%が適用される売主が不動産会社を含む法人の物件の場合は、700万円から2,500万円までに拡大されました。つまり、普通の中古物件より贈与の非課税枠が大きくなります。
リノベーション済み物件のデメリット
メリットの多いリノベーション済物件ですが、デメリットももちろんあります。以下に解説します。
見えない部分の欠陥が見えにくくなる
リノベーション済み物件は、文字どうり工事が完了しています。こうなると、素人でなくても見えない部分の欠陥を見つけるのは難しいものです。どのような工事が行われたのか、図面や書類(仕様書等)を見て確認する事が大切です。
室内はきれいだが、性能向上は行われていないことも
リノベーションの理想は、一旦内部を全て取り壊し(スケルトンリフォーム)、重要な部材や設備配管の不具合部分を取り替え、その上に新しい住宅設備や工事発注者の思い描く間取りを載せるような工事です。中身は新築同様の物件に再生されるのです。
しかし、リノベーション済み物件は、前述のように千差万別です。物件によっては、性能向上は行われていない物件もありますので、注意が必要です。見た目の良さに惑わされず、どのような工事がなされた物件なのか確認しましょう。
リノベーション済み物件であっても、物件調査は欠かせない
ここでは、リノベーション済み物件を購入する場合の注意点を、マンションと戸建てに分けてお伝えします。
マンションの場合は管理組合の調査を慎重に
マンションの場合は、いくらリノベーションをしても、所有者単独で手を加えられるのは専有部分だけです。お部屋の中の出来栄えに目を奪われて即決してしまわないようにしましょう。
マンション購入の基本である「マンションは管理を買え」を忘れずに、管理組合の調査を慎重に行いましょう。
具体的には、修繕積立金や修繕状況などの調査です。管理組合から委託を受けている管理会社による「重要事項に係る調査報告書」の取得や長期修繕計画の有無を、仲介する不動産会社に依頼しましょう。
戸建の場合はリノベーション済みであっても、インスペクションを
冒頭でもお伝えしたように、一口にリノベーション済みを謳った物件でもどこまで工事をしたのかは千差万別です。大規模な工事をしたのであれば、屋根や外壁などの保証が付いていたり、各種図面(住宅履歴図書)が付属してる場合があります。
しかし全てが上記のようなものではありません。戸建て購入にあたっては、インスペクションを実施されることをお勧めします。
インスペクションとは、建物状況調査のことを言い、「国土交通省の定める講習を修了した建築士が、建物の基礎、外壁などの建物の構造耐力上主要な部分及び雨水の侵入を防止する部分に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化・不具合の状況を把握するための検査」のことです。
専門家による調査をしてもらって安心して物件を購入しましょう。
リノベーション済み物件ばかり勧めてくる不動産業者には注意しよう
以上、リノベーション済み物件のメリット・デメリット、購入にあたっての注意点をお伝えしてきました。リノベーション済み物件が、あなたの求める住宅に適合するなら、積極的に検討されるとよいでしょう。
しかし、あまり適合するとは思えないのに、リノベーション済み物件ばかり勧めてくる不動産会社には注意が必要です。
前述のようにリノベーション済み物件の売主は、概ね不動産会社です。そうすると、あなたが購入すれば、仲介している不動産会社はあなたからの仲介手数料に加えて、売主である不動産会社からも仲介手数料が支払われるケースが多い(業界では両手取引という)です。
つまり、あなた(顧客)の意向や利益より、自社の利益を優先する会社ということです。
住宅購入成功の秘訣は、信頼できる不動産会社・担当者をパートナーとすることです。このような会社は、信頼できるパートナーとはいえません。
まとめ
最後にリノベーション済み物件を探したり、購入する時に気を付けておきたいポイントと、メリット・デメリットをまとめておきます。
- リノベーション済み物件はすぐに住むことができる
- キレイな状態なので、生活のイメージがしやすい
- 自分でリノベーションするよりも安くなることも
- 売主が不動産会社なので、保証が長い
- 個人が売主の物件に比べて住宅ローン減税の限度額が大きく、延長策も適用される
- 住まいの給付金が使える可能性がある
- その反面、リスクが目に見えにくくなる
- 表層的にきれいになっているだけで、性能向上工事は行われていないことが多い
- マンションの場合は管理をしっかり調査
- 戸建の場合は、リノベーション済み物件であってもインスペクション(物件調査)はするべき
- リノベーション済み物件ばかり勧めてくる業者は、売上目的で注意が必要
これらのポイントをしっかり把握したうえで、リノベーション済み物件を探すようにしましょう。
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