私たちが普段買い物をする時には消費税がかかります。
それは不動産においても同じで、価格が高いほど課税される消費税の金額も高くなり、マイホーム購入時の大きな負担となることもあります。
しかし不動産の場合、全てにおいて消費税がかかるわけではありません。
それはいったいどういうことなのか、そして中古住宅を購入する場合は消費税がかかるのか否かについてご紹介します。
不動産の取引には消費税がかかるものとかからないものがある
まずは、不動産の種類に限らず、消費税がかかるものとかからないものの例をご紹介します。
消費税がかかるもの
不動産取引で消費税がかかる例は、以下のものがあります。
新築住宅の購入(マンション・注文住宅含む)
不動産は、法律において「不動産事業者が販売する物件は消費税の課税対象」と決められています。
新築住宅は基本的に不動産事業者が売主であるため、購入の際に消費税がかかるのです。
ただし厳密にいうと、消費税がかかるのは建物分の価格のみで、土地分の価格には課税されません。
そのため、建物部分の建築を依頼する注文住宅も、消費税の課税対象となるのです。
増改築、リフォーム
既存住宅の増改築やリフォームは建物部分に対する工事なので、こちらも消費税がかかります。
住宅ローン事務手数料
住宅ローンを申し込んで不動産を購入する際、銀行との契約時に手続きを行ってもらうための住宅ローン事務手数料も消費税の課税対象です。
司法書士への報酬
不動産を購入後、物件の所有権保存登記や移転登記、表示登記、抵当権設定登記などの手続きを依頼した司法書士へ支払う報酬も消費税がかかります。
仲介手数料
土地や中古住宅などの不動産を購入する際、売主と買主の間で仲介してくれた不動産事業者に支払う仲介手数料も含まれます。
消費税がかからないもの
土地の購入
新築住宅には消費税がかかるとご説明した章でも述べたように、土地は消費税非課税の不動産物件です。
印紙税、不動産取得税、登録免許税
印紙税や不動産取得税、登録免許税は、その費用自体が税金であるため、さらに消費税が課税されることはありません。
火災保険料、地震保険料、団体信用生命保険料など
購入した不動産に対し、万が一の事態に備えて加入する火災保険・地震保険と、住宅ローンの名義人が加入する団体信用生命保険の料金も、消費税はかかりません。
中古住宅の消費税は売主によって変わる
冒頭で述べた「中古住宅を購入する場合は消費税がかかるのか否か」の答えですが、売主が誰なのかによって消費税がかかるかどうかが変わります。
それは、売主が個人なのか不動産事業者なのか、ということです。
新築住宅購入の際は、不動産事業者が売主であるため消費税がかかると述べましたが、これは中古住宅でも同じです。
一方、個人の売主は不動産事業者ではないため、消費税がかかりません。
消費税がかかる中古住宅の見極め方
先ほどの章で、売主が不動産事業者の中古住宅には消費税がかかるとご説明しましたが、ではどうしたら売主が個人なのか不動産事業者なのか見極めることができるのでしょうか?
その答えは、「気になる中古物件がリフォームやリノベーション済かどうか」です。
中古住宅を買い取る不動産事業者は、買い取った物件を再販売して利益を得ます。
しかし、買い取った中古住宅をそのままの状態で販売すると、買い取りにかかったコストは回収できたとしても利益まで得ることができません。
そこで不動産事業者は、買い取った中古住宅を自社でリフォームやリノベーションし、きれいな状態にしてから売り出すのです。
この方法であれば、リフォームやリノベーションできれいになって高まった価値分の価格を上乗せでき、結果として利益を得ることができます。
中古住宅の売主によっては、稀にあらかじめリフォームしてから売りに出すケースもありますが、リフォーム後の物件が買主の好みと異なるとなかなか買い手が見つかりません。
さらに、売主がリフォーム後に売り出すにはリフォームにかかった費用を販売価格に上乗せしますが、あまりにも高額すぎると買い手が見つからず、結局損をする可能性があります。
そうしたリスクを避けるため、売主が先にリフォームしてから売りに出すケースはほとんどありません。
よって、中古住宅の広告にリフォーム済やリノベーション済と書かれている物件は、不動産事業者が売主=消費税がかかる物件だと判断できます。
消費税がかかる物件とかからない物件の違い
先ほどは、消費税がかかる中古住宅では仲介手数料が発生せず、非課税の物件では仲介手数料がかかる旨をご説明しましたが、ほかにもこんな違いがあります。
住宅ローン減税
住宅ローンを組んで中古住宅を購入した方を対象に、所得税から毎年末のローン残高の1%分の金額を控除する住宅ローン減税ですが、実は消費税がかかったかどうかによって最大控除額が変わります。
消費税がかかった中古住宅の場合の最大控除額は10年間で400万円(消費税10%の場合)ですが、消費税がかかっていない中古住宅を購入した場合の最大控除額は10年間で200万円と、2倍もの差があります。
なお、住宅ローン減税の期間は原則10年間ですが、2019年10月1日から実施された消費税率10%への増税に伴い、最大13年間の減税を受けることができます。
※13年間の減税を受けるためには、2019年10月1日~2021年12月31日までに中古住宅を購入して居住していることが条件です。
住まいの給付金
住宅ローン減税の恩恵が少ない世帯でも、マイホーム購入時の負担を軽減できるように創設された制度が、住まいの給付金です。
ただし購入する物件が中古住宅の場合は、給付条件の一つに「売主が不動産事業者であること=消費税がかかる物件であること」が盛り込まれているため、個人が売主の中古住宅を購入した場合は住まいの給付金は受け取れません。
贈与の非課税枠
中古住宅を購入する際の資金の一部を、親や祖父母から受け取る方もいらっしゃるでしょう。
親や祖父母から財産の贈与を受けると贈与税がかかりますが、マイホーム購入のための資金を受け取った場合は、一定の金額までなら贈与税を非課税にできる制度があり、これを「住宅取得等資金贈与の非課税」といいます。
ただし贈与税の非課税枠は、中古住宅を購入(契約)した時期と消費税が課税されるか否かで、以下のように変わります。
消費税が課税される中古住宅の場合
契約年月日 | 一定条件を満たす住宅の 贈与税非課税枠 | 一般住宅の贈与税非課税枠 |
2019年4月1日~ 2020年3月31日 | 3,000万円 | 2,500万円 |
2020年4月1日~ 2021年3月31日 | 1,500万円 | 1,000万円 |
2021年4月1日~ 2021年12月31日 | 1,200万円 | 700万円 |
消費税が課税されない中古住宅の場合
契約年月日 | 一定条件を満たす住宅の 贈与税非課税枠 | 一般住宅の贈与税非課税枠 |
2016年1月1日~ 2020年3月31日 | 1,200万円 | 700万円 |
2020年4月1日~ 2021年3月31日 | 1,000万円 | 500万円 |
2021年4月1日~ 2021年12月31日 | 800万円 | 300万円 |
なお、上記の表で挙げた「一定条件を満たす住宅」とは、次のいずれかを満たす住宅のことです。
- 断熱等性能等級4または一次エネルギー消費量等級4以上
- 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上または免震建築物である
- 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上
贈与税の申告時は、いずれかの条件を満たしていることを記載した証明書が必要ですので、忘れずに添付しましょう。
※参照元:国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
制度が複雑化してきている
中古住宅の購入は、消費税がかかるかかからないかによって、仲介手数料の有無や住宅ローン減税の控除額、住まいの給付金の有無、贈与税の非課税枠など、さまざまな条件が異なります。
現在の消費税は10%ですが、このままずっと上がらないままでいるのか、さらに上がってしまうのか、はたまた0%になるのかは誰にも分かりません。
仮に増税が決定すると、消費の落ち込みを防ぐためにさまざまな軽減案が打ち出されるため、今以上に制度がかなり複雑化することが予測されます。
中古住宅を購入する際は、消費税との関係をしっかり理解しておかないと、買ってから後悔するかもしれません。
せっかくの中古住宅購入で失敗しないためには、中古住宅の取り扱いが得意な不動産業者に依頼するのがベストです。
難しい消費税との関係の説明はもちろん、消費税がかかる物件とかからない物件のどちらを選ぶ方が総合的にみてお得なのかなどのアドバイスも受けられます。
損をしない中古住宅購入を実現するためにも、ぜひ中古住宅の取引経験が豊富な不動産業者を選びましょう!
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