住宅ローンの申し込みを考えている方が、おそらく一度は見聞きしたことがあるかもしれないフラット35。
マイホームを買うための融資をしてくれる住宅ローンの一種でありますが、その性質や利用する際の注意点などについては、あまりよく知らない方も少なくありません。
フラット35のことをよく知らずに申し込んでしまうと、審査に落ちて利用できず、マイホーム購入の計画を大幅に変更しなければならなくなる可能性もあります。
フラット35に申し込む予定の方はもちろん、銀行の住宅ローンとフラット35で迷われている方も、ぜひこの商品の特徴や利用する際の注意点を理解しておきましょう。
人に貸す銀行と、物件に貸すフラット35
フラット35は、独立行政法人住宅金融支援機構(旧名称:住宅金融公庫)が販売している住宅ローンです。
住宅ローンの金利には、全期間固定金利型・固定金利期間選択型・変動金利型の3タイプがありますが、フラット35は全期間固定金利型の住宅ローンとなります。
※金利タイプの違いは下記の表を参照。
全期間固定金利型 | 借入時から完済時までずっと金利が変わらない |
固定金利期間選択型 | 借入時から数年間は固定金利で、その期間以降は再度固定金利を選択するか変動金利にするか選べる |
変動金利型 | 借入時から完済時まで金利が変動する |
フラット35の名称につく数字は、返済期間を最長35年間に設定できるという意味で、他には返済期間を20年以下に設定できるフラット20や最長50年間に設定できるフラット50などもあります。
そしてフラット35と銀行の住宅ローンの違いですが、銀行は申し込んだ方のスペックを見て融資可否を決めるのに対し、フラット35は購入予定の物件のスペックを見て融資可否を決めます。(もちろん、最低限の人の審査はあります)
これが、フラット35と銀行の住宅ローンの最も大きな違いなのです。
フラット35は適合証明書が発行できないと利用できない
フラット35は、購入予定の物件が新築住宅・中古住宅のどちらでも申し込むことは可能です。
ただし新築・中古ともに、フラット35を申し込む際は適合証明書の取得が必須条件となります。
適合証明書とは、住宅金融支援機構が定める技術基準を満たしていると証明するための書類です。
新築住宅なら検査機関に、中古住宅なら検査機関もしくは適合証明を行っている技術者に検査を申請して合格すると交付してもらえます。
なおフラット35の住宅建築に関する技術基準は、新築と中古で一部項目が異なります。
そのため申請する物件が中古住宅の場合は、新築時に適合証明書を取得していても、原則としてフラット35申し込み前に改めて最新の適合証明書を取得することも求められますので注意しましょう。
中古マンションで利用する時の注意点
フラット35の適合証明書は、新築か中古かだけでなく、物件が一戸建てなのかマンションなのかによっても技術基準が異なります。
中古マンションの場合、技術基準に関して特に注意するべき点は「旧耐震基準ではないこと」と「長期修繕計画書の有無」です。
旧耐震基準ではないか?
旧耐震基準とは、1981年(昭和56年)5月31日まで用いられていた耐震基準で、翌日の6月1日から施行された今の耐震基準は、新耐震基準と呼ばれて区別されています。
そしてフラット35の中古マンション適合証明書用の技術基準では、建築確認日が1981年6月1日以降であることが条件と記されています。
建築確認日とは、建物を建てる前にその建築計画がきちんと法律に適合していると確認を受けた日のことです。
そのため1981年6月1日以降に完成した中古マンションでも、建築確認日は同年5月31日以前というケースもあります。
ただし、建築確認日が5月31日以前の中古マンションは絶対NGかといえば、そうではありません。
建築確認日が旧耐震基準の時期に該当する中古マンションでも、フラット35が定める耐震評価基準を満たしていればOKです。
この但し書きは結構間違えやすいポイントですので、しっかり読み込んで理解しましょう。
長期修繕計画書があるか?
長期修繕計画書とは、将来見込まれる修繕工事や改修工事の内容・実施時期・費用の概算などをまとめた計画書のことで、国土交通省が公開しているガイドラインを基にマンション単位で作成するものです。
長期修繕計画は、マンションの住環境や資産価値を維持するために欠かせない重要なことなので、フラット35でもマンションの維持管理基準項目に設けています。
そしてフラット35では、長期修繕計画期間が20年以上あることを基準としています。
長期修繕計画書がなければ、そのマンションの将来の修繕計画はどうなっているのか、計画期間はどのくらいと考えているのかが分かりません。
中古マンションを購入予定の方でフラット35を利用予定なら、必ず長期修繕計画書の有無と内容の確認を行いましょう。
中古住宅で利用する時の注意点
続いては、中古住宅(一戸建て)に関するフラット35の技術基準の注意点として、下記の2点をご紹介します。
旧耐震物件ではないか?
中古マンションの項目でも触れましたが、中古住宅も旧耐震基準かどうかが重視されます。
建築確認日の判断方法は中古マンションと同じです。
鉄骨造と軽量鉄骨造は特に注意が必要
フラット35では、住宅の構造に関する技術基準として、耐火構造・準耐火構造・耐久性基準のいずれかに適合することを盛り込んでいます。
耐火構造とは、火災が発生した際に建物が倒壊したり近隣へ燃え広がったりすることを防止できる家全体の構造を指し、鉄筋コンクリート造や鉄鋼モルタル造などの建物が該当します。
一方、似たような言葉で「防火構造」がありますが、こちらは建築基準法で定められた構造のことで、家全体ではなく外壁と軒裏に延焼を防ぐための材料が用いられている家を指します。
火災発生時の延焼を防ぐ意味は共通していますが、その構造が家全体を指すのか家の一部を指すのかが違います。
そして鉄骨造や軽量鉄骨造で建てられた中古住宅は、基本的に建築基準法の対象である耐火構造・準耐火構造にあたります。
しかし、そのことを証明するための検査済証か、過去にフラット35を利用したことが分かる証明書がなければいけません。
※過去のフラット35は、旧住宅金融公庫の利用を証明する書類でもOK。
この点は個人で判断するのはかなり難しいので、フラット35の利用に詳しい不動産エージェントに相談して判断してもらう方が良いでしょう。
なおフラット35は、準耐火構造には省令準耐火構造を含むと明記していますので、省令準耐火構造についても調べておくと役立ちます。
フラット35一本の人は物件探しの時から注意が必要
申し込んだ方のスペックに関する審査基準が、民間の銀行よりあまり厳しくないフラット35は、年収や過去の借り入れ状況・勤続年数などで不安を覚える方にとっては頼れる住宅ローンです。
しかしフラット35は、民間の銀行の住宅ローン審査だと通りにくい方が利用するケースが多いため、もしフラット35の審査に落ちてしまったら他に申し込める住宅ローンはほとんどありません。
そのためフラット35のみで住宅ローンの申し込みを考えている方は、審査に落ちないよう物件探しの段階から慎重に選ぶことを忘れないでください。
フラット35の取り扱いになれた不動産業者を選ぼう
人を見て審査を行い、住宅ローンを融資するかどうか決める銀行に対し、フラット35は物件を見て審査を行って融資可否を決めるため、一見するとハードルが低いように感じるかもしれません。
しかし、実際は人に対する基準が厳しくない分物件の基準が厳しくなっているので、ここでつまずいてしまうとせっかくのマイホーム購入計画が振り出しに戻ってしまいます。
無駄な時間と労力を割かないためにも、フラット35の利用を検討している方におすすめなのは、フラット35の取り扱いに慣れている不動産エージェントを選ぶことです。
特に旧耐震基準の項目や耐火構造・準耐火構造などに関する内容は、不動産のプロでもフラット35に慣れていなければ解釈を間違えやすいのです。
少しでも審査に通りやすくする可能性を高めるためにも、物件探しの前にまずはフラット35のことに詳しく取り扱いに慣れている担当者探しから始めましょう。
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