住宅というと、府中市あたりでは近年マンションなどの方が主流になりつつあります。ただ築年数によっては、ほとんど土地代だけ購入できるものも多い中古住宅が多摩地区では根強い人気があり、府中市でもリノベーションを前提にした中古戸建ての取引は堅調です。
しかし中古マンションと比べて中古住宅・中古戸建て個別性が大きく、特に不動産の購入が初めての方には何を基準に物件を選べばいいか、判別が難しいのも確かです。
そこでここでは府中市で中古住宅を選ぶ際、どのような視点を持てば購入後のトラブルを防げるか、4つの事例をあげて解説しています。またこれから中古住宅・中古戸建てを選ぶ上で欠かせない、インスペクションの活用についても触れています。ぜひ参考にしてください。
中古住宅・中古戸建ては個別性が大きい
府中市に限ったことではありませんが、一般的に中古住宅・中古戸建ては、個別性が大きいと言われます。個別性が大きいとは「買っても良い住宅なのか」の判断が難しいことを指していると言えます。
中古戸建てはマンションとは違い、第一に広さや間取りはもちろん、建物自体の形状が均一ではありません。
また「買っても良い住宅なのか」という点では、マンションの共有部に当たる基礎や外壁などにも劣化や損傷の形跡を見なければなりませんし、天井・屋根裏や床下といった空間に「瑕疵(目につかない傷や不具合などに形跡)」が隠れている場合もあります。
さらに中古住宅は築年数で、耐震性や断熱性能に歴然とした差があります。こうした違いが、中古住宅は買っても良いか、逆に無駄になる物件かを分かり難くしています。
府中市の中古住宅・中古戸建てで多い購入後のトラブルは?
ただ確かに個別性は高い中古住宅ですが、購入後のトラブルの種類はある程度限られてきます。中古住宅の購入後のトラブルとして、よくあげられる次の4つです。
- 建物の傾き・歪み
- 付帯設備の故障
- シロアリ被害
- 雨漏り
ここからはこの4つのトラブルについて個別にみていきます。
建物の傾き・歪み
中古住宅購入後のトラブルによくあげられる建物の傾き・歪みですが、傾きや歪みが現れるのは、住宅の窓や戸口などの開口部の開閉がし辛くなるケース、床自体の傾き、あるいは地盤の不同沈下などが要因など、原因は色々考えられます。
ただ傾きそのものは築年数が浅い比較的新しい物件でも認められ、傾きの判断基準に達しないレベルなら特に問題はありません。
しかしインスペクションと言われる住宅診断で、プロの住宅診断士が実際にレベルを当て計測した結果、傾きのレベルが基準を超えた場合は問題です。
建物の傾きは主要な柱や梁のほか、土台や大引など床下や基礎周りの構造材の交換や補強程度で済む場合もあります。しかし傾きが酷く、欠陥住宅といわれるレベルだと、住み続けるのも困難となります。
なお建物の傾きの判断基準は、1000分の3(1mに対して、3mmの誤差)、または1000分の6(1mに対して、6mmの誤差)と言われます。
このような住宅は、基本設計上の問題や新築時の施工精度の悪さが原因で、大掛かりなリフォームや根底からの改築が必要になるケースもあり、そうなると購入を諦めなければいけません。
建物の傾き・歪みが認められる中古住宅は、購入可能なレベルか、新たに買うべきではないかの差が、非常に大きいと言えますし、実際に住宅瑕疵保険がつけられないのも、傾きが酷い中古住宅の特徴です。
そのため建物の傾きの程度によっては、物件に見切りを付け、ほかを探すなど切り替えが求めらます。なおインスペクションとは住宅の健康診断と似たようなもので、中古住宅の市場が発達している米国では、すでに8割近くの中古住宅でインスペクションが活用されています。
インスペクションについてのより詳しい情報は、記事の後半で解説していますのでそちらを参照ください。
付帯設備の故障
次にあげる中古住宅購入後のトラブルは、付帯設備の故障です。
付帯設備の故障は、建物の構造材や雨水の侵入にも直接関係する問題ではありません。そのため結論から言うと、中古住宅購入後の4つのトラブルの中では最も程度の軽いものと言えます。
何故なら付帯設備の故障は、売主・買主間、または仲介業者とのコミュニケーション不足がそもそもの問題だからです。
中古住宅の売買では、契約時に付帯設備表を用いた付け合わせを行います。付帯設備表とは中古住宅についてくる付帯設備が使えるか、壊れているかといった設備の状態が書かれた書類です。
この書類は売主自身が用意するのですが、既存設備をチェックする際、買主は付帯設備表をもとに設備の動作確認を行います。
ただ、空き家となっている中古住宅では、ガスそのものが開通していません。そのため、給湯器や床暖房などは動作確認ができないものもありますので、別途、当該設備を再チェックするため、日付を設定し直さなければなりません。
また付帯設備の保証は、あった場合でも大抵は7日間と短かく、故障が起こるのは、大抵は期間を過ぎてからとなります。この7日間は初期不良についてのみ対象としています。
付帯設備にはそれぞれ耐用年数というものがありますので、それぞれの設備について大体どれくらい使用しているかを確認しておけば、ある程度交換が必要となる時期の目安にもなるため、あとから故障したことで予期せぬ出費とならないように事前に価格面で交渉をしておくこともできます。
この辺りは、仲介業者の経験値などによってトラブルになることもあるので、経験豊富な担当者を選ぶようにしましょう。
シロアリ被害
3つ目の購入後のトラブルはシロアリ被害です。シロアリは木材を好むことから、家屋の部材をエサにすることは有名です。
またシロアリは木材のほかにも発泡スチロールやプラスチックなど好み、中古住宅の基礎断熱などに使われる、ボード状の断熱材をエサにすることでも知られています。
築20年程度の中古住宅といえば、まだ10年保証のシロアリ保証が新築時に使われていた頃です。そのため比較的新しく見える、築15年程度の中古住宅が、何んらかのシロアリ被害を受けていても不思議はありません。
特に高温多湿な日本では、10年以上経っていて途中で防蟻処理をしていない場合は、シロアリに注意した方がいいと思います。特にウッドデッキなどがあると、そこからシロアリが発生して本体に移っていることもあるので、注意が必要です。
シロアリ被害も、ほかのトラブルと同様、被害の程度によって対応の仕方が異なります。そのためできるだけ早期に、インスペクションを入れることをおすすめします。間に合えば最小限に被害が抑えられるからです。
雨漏り
最後のあげる中古マンション購入後のトラブルは雨漏りです。また雨漏りは、購入後のトラブルでも上位に君臨し続けています。
公益財団法人「住宅リフォーム・紛争処理支援センター」が出している『住宅相談統計年報 2018(2017年度の住宅相談と紛争処理の集計・分析)』[1]では、戸建住宅で主な不具合の事象として最も多かったのは「ひび割れ」(21.6%)で、次に来るのが「雨漏り」(14.7%)です。
最近までずっと1位に居続けた雨漏りですが、入れ替わったとは言え、まだ2位の座を守っています。
ただし、雨漏りは先述の付帯設備と違って構造上主要な部分になりますので、瑕疵担保責任の対象になります。不動産会社が売主となる中古住宅では、宅建業法で瑕疵担保責任が2年間となりますが、個人が売主となる一般的な契約で3カ月程度になります。
時期や程度によっては3カ月程度では気が付かないこともありえますので、内覧時に外壁の亀裂や、サイディングをつなぐゴムの劣化、室内に雨染みがないかを確認するようにしましょう。
もし雨漏りが疑われる場合、改修工事費用を売主と買主のどちらの負担で進めるかですが、今のところはケースバイケースで明確な規定はありません。
過去の事例では、インスペクションは買主の費用で行う場合でも、仲介業者の交渉により、雨漏りの補修工事は売主負担で行ってもらうケースやその補修工事を買主で行う代わりに、その分の費用を値引きしてもらうなどによって対応します。
ただ事案によってトラブルを避ける意味でも、あらかじめどちらが負担するか取り決めておけば、よりスムーズな取引になります。この辺りのさじ加減は、やはり不動産仲介業者のキャリア、または力量がモノを言います。
[1] 住宅相談統計年報 2018(2017年度の住宅相談と紛争処理の集計・分析)
【雨漏りの原因は多くは屋根や外壁の塗装とコーキング】
雨漏りの原因の多くは、屋根や外壁の塗装とサッシ周りのコーキングです。塗膜やコーキングが切れることで雨水の侵入が起こり、これが下地(透湿・防水シートやルーフィング)を通して躯体に達し、そして雨漏りに発展します。
ハウスメーカーでも10年目以降の保証は有料メンテナンスを条件に、以降の10年間も追加保証をしていますが、その際の有料メンテナンスには、屋根や外壁の塗装とコーキングの打ち直しが含まれています。
しかし有料メンテナンスをする方は限られていることから、比較的新しい築10年程度の住宅でも雨漏りは起こることがあります。
屋根材には経年劣化によって屋根材の隙間が狭まり、狭くなった隙間から雨水が毛細管現象を起こして、これが雨漏りの原因となる場合もあります。
購入後のトラブルを防ぐインスペクション
ここではトラブル4項目の説明でも登場した、インスペクションについて詳しく解説します。
インスペクションとは、マンション・戸建てを問わず、住宅に詳しい住宅診断士(インスペクター)が、あくまで第三者的な立場に立ち、これまで見落とされていた住宅の劣化や欠陥の状況を調査する手続きです。
そして必要に応じて、改修工事やそれを実施するタイミングについても総合的なアドバイスを行います。(記事では中古住宅に絞って解説していますが、インスペクションは新築住宅にも活用されています)
日本では2012年に国土交通省がインスペクションのガイドラインを策定、翌2013年に発表しましたが、中古住宅の流通が進んでいるアメリカでは、州により違いはあるものの、インスペクションの活用は取引のすでに半数を軽く超えるそうです。
日本ではまだ発展途上な部分はありますが、インスペクション制度が今後の中古市場の適切な活性化に寄与することは間違いないでしょう。
特に2018年の4月から、売主や買主から依頼を受けた仲介業者は、インスペクションの内容を説明し、技術者を斡旋・紹介できるかどうかの告知が義務化されました。これにより、インスペクションの認知が進み、以前より活用がしやすくなったとの声も聞かれます。
ただインスペクションは有料検査となり、床下や天井(屋根)裏といった範囲を広げると大体10万円程度の費用が掛かります。そこまで費用をかけてやった方がいいかという考えもありますが、決定的な欠陥住宅を買わずに済むことを考えれば安い投資かもしれません。また事前にインスペクションをしておくことで、リフォームにかかる費用がある程度予測もできます。
またインスペクションは基本的には、契約前に行うことが理想ですが、人気物件などでは早いもの順ということもあり、判断に迷うこともあると思います。契約後にインスペクションを行うこともできますが、インスペクションの結果をもとに価格交渉や契約の解除ができないので注意が必要です。
色々と課題があるものの、これまで業界が抱えてきた中古住宅購入後のトラブルが、インスペクション導入によって減少することは間違ありません。本制度の理解・浸透に期待が寄せられます。
中古住宅・中古戸建ては取り扱い難易度が高い
これまで見てきたように中古住宅は個別性が非常に強く、経験や建築知識など幅広いスキルが要求されるため、マンションなどに比べ難易度が圧倒的に高いです。業者の中には新築戸建てや中古マンションしかやらないというところもあります。
そして中古住宅の価格が必要以上に抑えられているのは、建物の置かれている状況が、よくわからないことが原因の一つです。しかしこの分かり難さに風穴を開けるのも、インスペクションに期待されていることです。
例えばインスペクションでは、次のような診断項目があります。
- 屋内給排水管の劣化
- 床下や水回り付近のシロアリ被害
- 建物の傾き・歪み
- 外壁面の著しい亀裂やひび
- 地盤の不同沈下
- 土台や大引など床下や基礎周りの構造材の施工不良
- 定常的に継続している雨漏りの跡
- 躯体の腐食の有無
- 構造耐力上主要な部分の著しい劣化
- その他、破壊調査を行う必要のある箇所の有無など
かつての築20年を超える住宅といえば、上記のような箇所が見つかっても放置し、やがて解体を待つだけが中古住宅の運命だったといえます。ところが現在の築20年といえば、定期的なメンテナンスや改修工事を行えば、住める価値が十分継続する建物もあります。
国も中古住宅の流通促進を促す目的で、「安心R住宅」などの新たな制度を立ち上げていますが、「不安」「きたない」「わからない」など、従来の中古住宅のマイナスイメージを払拭し、「住みたい」「買いたい」と思えるよう、さらにインスペクションへの期待は高まっています。
インスペクションを使いこなせる担当者を
日本のインスペクションは欧米の制度とは違い、インスペクションの費用、または改修工事の費用を、売主・買主のどちらに負担させるか、日本ではまだケースバイケースだということはこの記事中で何度か触れています。
ただしキャリアがある担当者であれば、インスペクションの費用は買主負担としながら、ある改修工事に関しては売主に交渉し、そして費用を負担してもらうなど、実に柔軟に対応してくれます。
一方で、改修工事の交渉がうまく運ばず、インスペクションだけではなく、中古住宅を購入も止めてしまう例もあります。もちろん2つの事例を一緒にして比較はできません。売主によっては、まだインスペクションという新たな制度に馴染めない方もいるからです。
ただインスペクションなど、さまざまな制度に柔軟に対応するエージェントと、まだキャリアが浅く建物に対する知見が乏しい担当者との差は、今後ますます広がってくるでしょう。
言うまでもないことですが、この制度を積極的に活用したい方は、できればインスペクションを使いこなせる担当者を選ぶべきです。やはり、場数に勝る経験はないと言うことなのでしょう。
まとめ
この記事のポイントを整理しておきます。
- 中古戸建てのトラブルで多いのは「建物の傾き・歪み」「付帯設備の故障」「シロアリ被害」、そして「雨漏り」の4つです
- 「建物の傾き・歪み」と「雨漏り」は、構造耐力上主要な部分と雨水の侵入に関する瑕疵に当たり、そのため、出来るだけ早い段階でインスペクションを入れることをおすすめします
- 「シロアリ被害」は住宅工事に起因するとは限らない場合があり、インスペクションは可能ですが住宅瑕疵保険は付けらません。そのため修復工事は防蟻会社に防蟻処理を依頼することが一般的。処理が完了すれば5年保証を付けてくれます
- インスペクションとは、住宅の隠れて気づかない傷や欠陥を明らかにすること。また住宅瑕疵保険に加入するには改修工事を受けなければなりません
- インスペクションには幾つか課題もありますが、制度が浸透していけば、中古住宅が抱える問題を減らせることは間違いありません
住宅のなかでも中古住宅は特に「誰から買うか」ということが重要なポイントです。上手くいけば掘り出し物が見つかりやすいのが中古住宅の特性であるともいえますので、ぜひ中古住宅の取り扱い実績のある、経験豊富な担当者を選ぶようにしてください。
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