住宅ローンの融資を受けることは、マイホーム購入を実現させるために欠かせないポイントですが、「銀行の住宅ローン審査は何を見るのだろう?」「落ちたらどうしよう」と不安に思う方は多くいらっしゃいます。
銀行が、住宅ローンを申し込んだ方に対して返済能力があるかどうかを審査するのは当然ですが、返済能力の有無は収入だけで判断しません。
今回は、銀行が住宅ローンの審査で見る項目と重要度が高い項目、そして勤続年数が短い方が審査をクリアする可能性を少しでも高める方法についてご紹介します。
住宅ローンの審査で銀行は何を重視しているか?
住宅ローンを申し込むほとんどの方が気にされる審査のポイントの一つは、やはり「銀行の審査項目と重要度が高い項目は何か」ということでしょう。
残念ながら、審査項目などの詳細は銀行に直接尋ねても教えてもらうことはできません。
しかし、国土交通省住宅局が毎年度実施している「民間住宅ローンの実態に関する調査」を見ると、回答があった銀行がどんなことを審査するのか、その中でもどの項目を重要視しているかが分かります。
例として、平成30年度版の調査結果報告書を見てみましょう。
※参照資料:国土交通省住宅局 平成30年度 民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書
Ⅱ.調査結果 Ⅱ-1.個人向け住宅ローンの実績 2.長期・固定金利の住宅ローン等に関する融資審査等 (2)審査項目を参照。
回答した銀行や信用金庫などの金融機関が住宅ローンの審査として見ると回答した項目は、その他を含めて実に21項目あります。
そしてこの21項目中、平成28年度・平成29年度に続き9割以上の金融機関が審査すると答えた項目は、以下の6項目ありました。
平成30年度 | 平成29年度 | 平成28年度 | |
健康状態 | 98.6% | 95.8% | 98.8% |
借入時年齢 | 98.3% | 95.7% | 97.6% |
完済時年齢 | 97.7% | 97.3% | 97.6% |
担保評価 | 97.2% | 95.6% | 97.2% |
年収 | 95.6% | 93.7% | 94.4% |
連帯保証 | 94.9% | 92.9% | 93.5% |
なお、返済負担率については平成29年度のみ82.7%だったものの、平成28年度は97.2%、平成30年度は90.7%と、高い数値を記録しています。
勤続年数が短い時は?
先ほど挙げた6項目と返済負担率以外にも、実は銀行が審査時に重要視する項目があります。
それは「勤続年数」です。
民間住宅ローンの実態に関する調査では、勤続年数を重要視する金融機関の割合が平成28年度は76.3%だったのに対し、平成29年度は92.8%、平成30年度では95.7%と増えています。
勤続年数が重要視される大きな理由は、安定した収入が見込めるためです。
一般的には、勤続年数が長くなるほど昇給して年収が高くなります。
年収が高いということは、住宅ローンもきちんと返済してもらえる可能性が高いため、銀行側も融資しやすくなります。
しかし、勤続年数が短いと得られる収入もさほど高くないため、銀行側は住宅ローン申込者に対して安定した収入が見込めない=将来返済が滞るかもしれないと判断します。
そのため、転職直後に住宅ローンの申し込みをした方は勤続年数がリセットされ、審査時に不利となるのです。
とはいえ、タイミングや個別の事情などでどうしても転職直後に家を買いたい、もしくは審査期間中に転職する予定がある方もいらっしゃるでしょう。
そのような事情がある方は、次の2つの方法を検討することをおすすめします。
フラット35を検討してみる
勤続年数が短い方におすすめする1つ目の方法は、フラット35の申し込みを検討することです。
フラット35とは、独立行政法人住宅金融支援機構が取り扱っている全期間固定金利型の住宅ローンで、申し込み要件は下記の2つです。
- 申し込み時の年齢が満70歳未満であること(親子リレー返済利用の場合を除く)
- 日本国籍であること、または日本国内の永住許可を受けている方・特別永住者に該当する方であること
※親子リレー返済を利用する場合は、申し込み時の年齢が満70歳以上でも可。
上記の条件には、他の銀行の住宅ローン審査とは違い、勤続年数に関する記述がありません。
そのため転職直後の方でもハードルが低く、申し込みやすいのが特徴です。
なおフラット35には、フラット20・フラット35(リフォーム一体型)・フラット35リノベなどのプランもありますが、いずれも申し込み要件は同じです。
※フラット20…返済期間が20年以下の住宅ローン
※フラット35(リフォーム一体型)…中古住宅購入とリフォームを併せて行う方向けの住宅ローン
※フラット35リノベ…中古住宅購入と性能向上リフォームを行う方、もしくは性能向上リフォーム済の中古住宅を買う方向けの住宅ローン。
ただし、2020年4月1日~2021年3月31日までに申し込んで受け付けられた件のみに適用される。
申し込み受付期間中でも、予算額に達する見込みが立った時点で受付終了。
※参照元:独立行政法人住宅金融支援機構 フラット35ご利用条件
勤続年数の条件を満たすまで待つ
勤続年数が短い方におすすめする2つ目の方法は、勤続年数の条件を満たすまで待つことです。
安定した収入が得られて、今後も昇給が見込めるかどうかを銀行側が判断するには、申し込んだ方が現在の勤務先に転職してからある程度の期間が経っていないとできません。
そのため住宅ローンを申し込みたい銀行が決まっている方は、その銀行が定める勤続年数の条件を満たせる時まで申し込みを待つのも一つの方法なのです。
ただし、勤続年数の最低基準は銀行によって異なるため、申し込み希望の銀行がある方は必ず事前にチェックしましょう。
例として、都市銀行系の住宅ローン申し込み時に定められている勤続年数の条件を下記に記載してみました。
- 三菱UFJ銀行…1年
- 三井住友銀行…なし
- みずほ銀行…3年
- りそな銀行・埼玉りそな銀行…給与所得者は勤続年数1年以上、給与所得者以外は勤続年数か営業年数のいずれかが3年以上
上記のように、三菱UFJ銀行とみずほ銀行は最低勤続年数の縛りがある一方で、三井住友銀行には勤続年数の最低基準はありません。
またりそな銀行・埼玉りそな銀行のように、申し込む方が給与所得者なのかそれ以外かによって、勤続年数や営業年数の異なる最低ラインを設けているケースもあります。
そして先ほど挙げたフラット35ですが、実は住宅金融支援機構が単体で販売しているのではなく、民間金融機関と提携して融資を行う住宅ローンです。
そのため、申し込み希望の銀行がフラット35を取り扱っていれば、銀行を通じて申し込むことが可能です。
民間の銀行を通じてフラット35に申し込む場合は、住宅金融支援機構が定めている利用条件が基本となるため、勤続年数の制限がありません。
たとえば、みずほ銀行独自の住宅ローンであれば勤続年数は3年以上、りそな銀行・埼玉りそな銀行独自の住宅ローンなら勤続年数は1年以上ないし3年以上の制限が付くと説明しました。
ですが、みずほ・りそな・埼玉りそなともに、機構買い取り型のフラット35も販売しています。
同様に、三井住友銀行でも機構買い取り型のフラット35を取り扱っています。
もちろん、都市銀行系以外でもフラット35を取り扱う民間金融機関はたくさんあります。
銀行で住宅ローンを申し込みたいけれど勤続年数の基準を満たさないことに悩む方は、銀行を通じたフラット35の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
ただし、三菱UFJ銀行はフラット35の取り扱いがないため、その点にご注意ください。
住宅購入は転職前にするのが吉!
9割以上の銀行が勤続年数を重視すると回答していることを踏まえると、勤続年数は住宅ローンの融資を受けるにあたり、ご自分に安定した収入があることを証明する大事なアピールポイントの一つです。
今はステップアップや独立・異業種への挑戦など、さまざまな理由で転職を決める方も多い時代ですし、転職自体は悪いことではありません。
ただ、マイホーム購入時は転職して勤続年数がリセットされてしまうことが審査時にあまり良い印象を与えず、不利となります。
そのためマイホーム購入と転職を考えている方は、住宅ローンの審査に及ぼす影響が少ない転職前に家を買うことをおすすめします。
マイホーム購入と転職のタイミングは、どちらを先にするのかで審査通過の可能性が左右されてしまうので、そうした相談にも乗ってくれる不動産エージェントを探してから家選びを進めると安心です。
住宅ローンで不安を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
参考になったら「いいね」をお願いします。