あなたは、「すまいの給付金」という制度をご存知でしょうか?
住まいを購入する際に知っておくとお得な制度なのですが、住宅ローン減税と比べると認知度が低く、後から知って悔やむ方も少なくありません。
また、すまいの給付金の名前は知っているものの、給付条件など詳細を知らず、いざ申請しようとしたら対象外でもらえない、という可能性もあるかもしれません。
この記事では、中古住宅購入者がすまいの給付金をもらえるかどうかについてご紹介します。
中古住宅でもすまいの給付金はもらえる
結論から申し上げますと、中古住宅でもすまいの給付金をもらうことは可能です。
ただしそのためには、住まいの給付金の概要や、もらうための条件をよく確認して理解しないといけません。
まずは、すまいの給付金の概要についてご紹介します。
すまいの給付金がスタートしたのは、2014年(平成26年)4月です。
この年は消費税が5%から8%に増税された年で、住宅購入にかかった負担を軽減する目的で創られました。
住宅購入にかかった負担を軽減する制度としては住宅ローン減税が有名ですが、住宅ローン減税は既に支払った所得税などから一定の金額を控除する制度であり、収入が低い方にはあまり効果がない点がデメリットです。
一方ですまいの給付金は、住宅ローン減税を利用してもあまり負担軽減にならない方に対する救済措置です。
しかも住宅ローン減税との併用が可能なので、消費税増税後に住宅を購入する方の負担軽減がしやすい点が魅力です。
すまいの給付金は、2021年(令和3年)12月まで実施され、新築住宅だけでなく中古住宅も給付対象ですので、中古住宅の購入を検討している方は忘れずにチェックしましょう。
すまいの給付金がもらえる住宅の条件
続いて、すまいの給付金がもらえる住宅の条件から、特に重要な次の2つをご紹介します。すまいの給付金をもらうためには、以下の2点を同時に満たす必要があります。
- 消費税の課税物件であること
- 既存住宅瑕疵保険に加入できること
消費税の課税物件であること
先にも述べたように、すまいの給付金は消費税増税による住宅購入者の負担を軽減することが目的ですので、消費税が課税される物件であることが大前提です。
私たちが普段食品や日用品などを買うときは消費税がかかりますが、不動産は物件によって消費税が課税されるか否かが異なります。
中古住宅の場合、消費税が課税される物件かどうか見極めるには、売主に注目しましょう。
中古住宅の売主は、個人と不動産事業者(宅地建物取引業者)に分かれます。
売主が個人の中古住宅には消費税が課税されないため、すまいの給付金はもらえません。
ですが、宅地建物取引業者が売主の中古住宅は、売主が個人ではないため消費税が課税され、すまいの給付金をもらえる対象となります。
既存住宅瑕疵保険に加入できること
中古住宅を購入してすまいの給付金をもらうには、その住宅が問題なく住める物件かどうかを証明することも重要です。
それを証明するのが、既存住宅瑕疵保険です。
既存住宅瑕疵保険とは、中古住宅を売る際に売主が被保険者となり、住宅にひび割れや雨漏りなどの問題がないかどうかを調べ、無事クリアできたら加入できる保険です。
なお、この検査は売主本人ではなく第三者の専門家が行うため、より信頼できる検査結果です。
もし検査して何らかの欠陥(瑕疵)が見つかると、売主はそれを修繕しないと検査をクリアできず、既存住宅瑕疵保険にも加入できません。
なお既存住宅瑕疵保険は、万が一購入後に瑕疵が発覚した場合は、保険会社から被保険者である売主(または検査を行った事業者)へ保険金が支払われます。
そして売主は、この保険金で瑕疵に対する保証=修繕を行わなければいけないため、購入前だけでなく購入後に万が一のことが起きた際も安心できる点がメリットです。
中古住宅を購入する際は、売主に既存住宅瑕疵保険に加入しているか、まだ加入していない場合は検査を受けて入ってもらえるかどうか確認しましょう。
すまいの給付金は物件によるが、条件は厳しめ
先ほどは、売主と既存住宅瑕疵保険に関する条件を挙げましたが、中古住宅購入者がすまいの給付金をもらうには、ほかにも以下のような厳しい条件をクリアしなければいけません。
(1)床面積について
購入希望の中古住宅の床面積が50㎡以上でないと、すまいの給付金はもらえません。
また50㎡以上という基準も、一戸建てとマンション(共同住宅)で異なります。
一戸建ての場合は、壁の中心線で囲ったときの内側の床面積(壁芯面積)が、マンションなどの共同住宅は、壁や柱で囲まれた内側の床面積(内法面積)が対象です。
そして正確な床面積は、不動産登記簿に記載されています。
物件の広告に記載されている床面積は、ぱっと見で壁芯面積なのか内法面積なのか判別できないこともあるので、売買契約前に必ず不動産登記簿でご確認ください。
(2)物件売買時に行う検査について
既存住宅瑕疵保険の章でも述べたように、中古住宅は第三者の専門家の検査を受けたうえで問題なく住めることが証明できないと、すまいの給付金をもらえません。
ただし、問題なく住めるかどうかを証明する方法は、既存住宅瑕疵保険以外にもいずれか2つがあります。
- 既存住宅性能表示制度を利用して、耐震等級が1以上のものである
- 建築後10年以内で住宅瑕疵担保責任保険に加入済、または住宅性能表示制度を利用している
「既存住宅瑕疵保険の加入」「既存住宅性能表示制度利用済で耐震等級が1以上」「建築後10年以内で住宅瑕疵担保責任保険に加入済、または住宅性能表示制度を利用している」のいずれかが証明できればOKです。
(3)年齢制限について
住宅を購入する際は多くの方が住宅ローンを組みますが、中古住宅の場合は住宅ローンを組まずに現金で購入を検討する方もいらっしゃるでしょう。
もし現金一括で中古住宅を購入するなら、購入する方の年齢が50歳以上でないとすまい給付金はもらえません。
ただし、50歳以上かどうかを判断する基準は、物件の引き渡しを受けた年の12月31日時点となります。
例1:8月生まれの方が6月に中古住宅の引き渡しを受ける…引き渡し時点ではまだ49歳だが、その後誕生日を迎えて年末には50歳に達しているため給付金をもらえる。
例2:1月生まれの方が前年の11月に中古住宅の引き渡しを受ける…引き渡しを受けた年の年末はまだ49歳なので、すまいの給付金はもらえない。
年齢はあくまですまいの給付金の申請時点ではなく、物件の引き渡しを受けた年の年末が基準ですので、現金一括で中古住宅を購入予定の方は間違えないようにご注意ください。
なお、住宅ローンを組んで中古住宅を購入する場合は、年齢制限の条件はありません。
(4)収入について
すまいの給付金は、申請者の収入に応じて課税される都道府県民税の所得割額(給付基礎額)と、申請対象の住宅の持ち分割合によって給付額が変わります。
※給付額の計算式…給付額=給付基礎額×持ち分割合(持ち分割合は、登記事項証明書の権利部にて確認)
所得割額とは、都道府県民税と市区町村民税を併せた住民税に課税されるもので、都道府県民税、市区町村民税それぞれの割合が決められています。
どのくらいの割合が課税されているのかは、個人住民税の課税証明書で確認できます(住民税が非課税の方は非課税証明書でOK)。
なお都道府県民税の所得割額の計算は、すまいの給付金申請者の額面収入から給与所得控除や扶養控除などを差し引いた額に規定の税率をかけて算出しているため、慣れていないと計算が難しいです。
さらに、都道府県民税が課税されている自治体が政令指定都市の場合、2018年度から都道府県民税と市町村民税の割合が変わっているので、その点にもご注意ください。
所得割額と給付基礎額、収入額の目安については、以下の表をご参照ください。
※収入額の目安は、夫婦+中学生以下の子ども2人の4人家族をモデルケースにしています(妻は収入なし)。
【2017年度(平成29年度)以前】
地域 | 全自治体共通 |
都道府県民税率 | 4% |
市区町村民税率 | 6% |
【2018年度(平成30年度)以降】
政令指定都市以外 | 政令指定都市 | |
都道府県民税率 | 4% | 2% |
市区町村民税率 | 6% | 8% |
【政令指定都市一覧 2020年(令和2年)3月現在】
- 北海道:札幌市
- 宮城県:仙台市
- 神奈川県:横浜市、川崎市、相模原市
- 千葉県:千葉市
- 埼玉県:さいたま市
- 新潟県:新潟市
- 静岡県:静岡市、浜松市
- 愛知県:名古屋市
- 京都府:京都市
- 大阪府:大阪市、堺市
- 兵庫県:神戸市
- 岡山県:岡山市
- 広島県:広島市
- 福岡県:福岡市、北九州市
- 熊本県:熊本市
【基礎給付額 消費税率10% 住宅ローン利用あり】
給付基礎額 | 収入額の目安 |
50万円 | 450万円以下 |
40万円 | 450万円超525万円以下 |
30万円 | 525万円超600万円以下 |
20万円 | 600万円超675万円以下 |
10万円 | 675万円超775万円以下 |
【基礎給付額 消費税率10% 住宅ローン利用なし】
給付基礎額 | 収入額の目安 |
50万円 | 450万円以下 |
40万円 | 450万円超525万円以下 |
30万円 | 525万円超600万円以下 |
20万円 | 600万円超650万円以下 |
参照データ:国土交通省 すまい給付金 給付額について(ページ内の印刷用「給付基礎額と都道府県民税の所得割額についてはこちらをご覧ください」)
中古住宅の取り扱いや制度に詳しい不動産会社を選ぼう
住宅ローン減税と併用できて、収入が少なくても住宅購入の負担を軽減できるメリットがあるすまいの給付金ですが、条件がなかなか厳しいことや金額の計算方法が複雑な点がネックとなりやすいです。
そこで頼りになるのが、中古住宅の取り扱いや制度に詳しい不動産会社を選ぶことです。
中古住宅を多く取り扱い、さらに中古住宅に関する制度に詳しい不動産会社であれば、ご自分が気になる物件がすまいの給付金をもらえるのかもらえないのかを相談しやすいですよ。
人生で最も高い買い物ともいわれる住宅購入だからこそ、お得に使える制度と中古住宅の販売に強い不動産会社を見極めて相談し、後悔のない住まい選びを実現しましょう。
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